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大和蔵元探訪酒めぐり

vol2.千代酒造 醸造「櫛羅」「篠峯」社長 堺哲也

清らかさと華やかさ「櫛羅」「篠峯」蔵元杜氏インタビュー

  • 情報掲載日:2017.08.30
  • ※最新の情報とは異なる場合があります。ご了承ください。

地を愛し、水に縛られ、挑み続け
清らかに華やかに「風土」を醸す

みずみずしく、きれいな旨味。フルーティな吟醸香が香り立つ。「初恋の味やわ」と“大昔の男子高生”がウキウキと薦めた酒だ。「篠峯」の人気銘柄「八反」のことである。うーん、ワカル気がする。

“初恋の八反”はもとより、千代酒造の酒はどれもきれいで優しく品がある。雑味のない清らかさと華やかさが多くの日本酒ファンを惹きつけてやまない。奈良の名蔵の一つである。

運命の恋
北の国のワインの人が、奈良の酒蔵を継ぐ

蔵元杜氏の堺哲也さんは、北の国から来た、元はワインの人である。

北海道で22歳まで過ごしてワインの道へ。山梨の老舗ワイナリー「グレイスワイン」に就職。東京の酒類研修会で、運命の人に出会った。

千代酒造蔵主の娘。家業を継ぐ人であった。「盲目だったんでしょうか」と笑って振り返る。出会いから1年後、ワインからまさに畑違いの酒蔵へ「飛び込みました」。今から22年前、28歳のことである。

9年連続、金賞常連蔵

評価も上昇の一途をたどる。

蔵があるのは葛城山のふもと。その山の伏流水を自社井戸から汲み出して、なんの処理もせず、天然水のそのままで酒を仕込む。

「日本酒は水」。堺さんは言う。「私自身は、水に縛られていると思う」。もっとも酒造りは「言葉では言い尽くせない」。酒造りの工程すべて、造る人の手によっても変わる。

蔵の周囲にある自家田で自家栽培の山田錦が育ち、土地の風土を醸した「櫛羅」の酒米となる。
蔵の周囲にある自家田で自家栽培の山田錦が育ち、土地の風土を醸した「櫛羅」の酒米となる。

地のもの「櫛羅」と挑戦の「篠峯」

「時間と手間をかけて、風土を醸した酒造りをする」。それが蔵の思いである。そして蔵の地名を冠した酒「櫛羅(くじら)」には、蔵が目指す先が映る。

「櫛羅」の酒米は、全て自家栽培。肥料も農薬も抑えて「うまい酒米」を目指したもの。栽培量に限りがあるため、多くは醸せないが、気候、土、水、米。全て櫛羅の風土を映し込んだ酒である。

そして葛城山の別名を冠した酒がもう一つの主力商品「篠峯」である。こちらは挑戦。いろんな酵母でいろんな米で、いろんなバリエーションから理想を追い求めた酒である。

日本酒はものすごく自由

「日本酒はものすごく自由で選択肢が多い」。どの酵母を使おうか、どんな米をどう磨こうか。かつてのワインの作り手はそう思う。一方でどれも「千代酒造の酒」となる。蔵に入って20年経ち、そんなゴールも見えてきたところである。

味ではない。
風土を醸し、千代酒造の酒となる。

「自社酵母に9号酵母に、酵母を変えるだけでも、いろんな味わいの表現ができる。でも味は表面上、出てきているもの。

味というのは、実はあまり重要視していません」。もちろんうまい酒を造る。しかしこんな味にしたいとは思わない。流行りに合わせて味をつくろうとは考えもしない。

「米を選び、水を選び、酵母を選び、自然に醸されたのが、うちの酒」。味ではないのだと今にして思う。本質は水を生かした酒。「水に縛られる」とはこのことである。

「櫛羅」を醸す。「篠峯」をいろんなバリエで醸す。しかし本質は変わらない。同じ水で、この蔵で、同じ人の手が造る。

だから千代酒造の酒はどの酒も似通うし、とどのつまりは「一緒」と思う。他の蔵の酒とは違う、千代酒造の酒である。

ただしその酒は10年前とは同じ酒ではない。それは作り手の経験であり、生きざまである。「10年でみると全然違いますね」。

精米にもこだわる。自社で精米機を持ち、農家ごと、田んぼごとに米を見て、精米具合を変えていくこだわりよう。
精米にもこだわる。自社で精米機を持ち、農家ごと、田んぼごとに米を見て、精米具合を変えていくこだわりよう。
製麹室。時間をかけて丁寧に麹をつくるため麹室は4室もある。昨年、新しい室を作った。室が変わると麹のできもまた変わるので酒造りを構築し直さないと」。造りには年々の工夫と微調整を欠かさない。
製麹室。時間をかけて丁寧に麹をつくるため麹室は4室もある。昨年、新しい室を作った。室が変わると麹のできもまた変わるので酒造りを構築し直さないと」。造りには年々の工夫と微調整を欠かさない。

今のテーマは「農業」と「熟成」

これまでは自家栽培で酒米をつくることが目標であった。しかし今は、さらに美味しい酒米をどうつくるか。これもまだまだ無限の可能性があると思う。

そして熟成。寝かせて真価を発揮できる酒造り。数年前から視野に入れ、昨年から生酛で試み、答えが出るのはまだまだ先のこと。

「今飲んでも3年後に飲んでも10年先に飲んでもうまい。「そんな酒なら面白いし、楽しいし、価値がある」。なるほど10年後の記念日に開けようかとそんな楽しみがあっていい。

新しい酒はつねに生む

それとは別に「新しい酒」には常に取り組んでいる。

吟醸、大吟醸になるほど酸味があればバランスが取れると考え、きれいな酸をテーマに生酛の純米大吟醸、山廃の純米に挑戦。これは年々の取り組みにする考え。

そして今年からは「田んぼラベルシリーズ」も出した。自家栽培米の生産量には限りがある。ならばと県内の熱心な農家と手を組んで、その農家の米だけで醸したシリーズである。いわば千代酒造印のブランド酒米である。

千代酒造の醸す酒は、
最後には、一つの酒となればいい

先を見る目は柔軟で、理想の酒造りへの思いはまっすぐである。

「いつか千代酒造の水にはこれが最高と言い切れる、米、酵母、全ての造りで一つの答えを見つけたい。

見つかれば、千代酒造の醸す酒は、一つの酒でそれでいい。「それが本当のゴールでしょうか」。

それは果てなき夢のようだとも思う。究極の酒を追い求め、堺さんの挑戦はこれからも続いていく。

左から「篠峯」田んぼシリーズ。青は精米具合55%「山田錦」。白は精米具合60%「山田錦」。緑は昔の米「亀の尾」を使用。いずれも奈良県産米100%。隣は秋口から発売される「篠峯 秋色生酒」。右端は自家栽培米100%「櫛羅」。
左から「篠峯」田んぼシリーズ。青は精米具合55%「山田錦」。白は精米具合60%「山田錦」。緑は昔の米「亀の尾」を使用。いずれも奈良県産米100%。隣は秋口から発売される「篠峯 秋色生酒」。右端は自家栽培米100%「櫛羅」。

Information

千代酒造 株式会社
住所
奈良県御所市大字櫛羅621
電話番号
0745-62-2301
リンク
千代酒造 株式会社

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