2017/08/23 01:00
映画「ダンケルク」レビュー(2017年9月9(土)公開)
観客を深く深く沈み込ませる、映像と音楽の劇的体験
<p style=padding-left: 30px;>一分一秒が激烈な命のやりとりだ。映画が始まったら最後、映画館の椅子に深く深く、沈み込むことになる。</p>
これまでも第一級の戦争映画が「戦場に放り込まれる感覚」を観客にもたらしてきたが、『ダンケルク』で観客はまったく新しい体験をすることになる。
高まる緊張感に押し寄せる絶望、それは陸から空から海からやってくる。
敵に完全包囲されたダンケルクに取り残された40万人の兵士たち。絶体絶命の彼らの救出が、3つのドラマから同時進行。
それらはものすごいスピードで切り替わり、時に時間軸を超えて折り重なり、そのたびに観客は海に溺れ、地で身をすくめ、空から落ちる感覚を味わい続けることになる。
この感覚をとてつもなく深めるのが音響、そして音楽だ。
これまで革新的な作品を生み出してきたクリストファー・ノーラン監督と天才作曲家ハンス・ジマーの素晴らしい産物。『ダンケルク』はほとんどセリフが排されて、代わりに轟音のリズムが臓腑に響く。
時計の針の音が命の刻限を知らせ、重低音の音楽が兵士の運命を刻むように増幅され、兵士の鼓動とこちらの鼓動が連なる一体感!
キャストは主役のトミーを演じるフィオン・ホワイトヘッドを始め、ハリー・スタイルズ(ワン・ダイレクション)など今作で映画デビューを飾る若手俳優たちが重要な役どころで出演。
実際の兵士の年齢に近い彼らの若さが痛々しく、互いの命を握り合い、決して諦めずに生き抜く姿に心動かされずにいられない。
あまりにカッコいい空軍パイロットを演じるトム・ハーディやいぶし銀の名優ケネス・ブラナーら豪華アンサンブル・キャストの演技も見もの。
CGを嫌うノーランのこだわりが生んだリアルな映像は驚きと臨場感に満ち、救われんともがく命と溶け合い音楽で結ばれて、観客を深く深く映画の中へと沈み込ませていく。
【監督】クリストファー・ノーラン
【キャスト】フィオン・ホワイトヘッド、ハリー・スタイルズ、ケネス・ブラナー、キリアン・マーフィー、マーク・ライランス、トム・ハーディー ほか
【奈良県上映劇場】イオンシネマ西大和、TOHOシネマズ橿原、イオンシネマ高の原、シネマサンシャイン大和郡山、ユナイテッド・シネマ橿原
※上映日時は各劇場HPを確認