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大和蔵元探訪酒めぐり

vol1.美吉野酒造 醸造「花巴」専務取締役 橋本晃明

しっかりした酸がまろやかでうまい「花巴」蔵元杜氏インタビュー

  • 情報掲載日:2017.07.26
  • ※最新の情報とは異なる場合があります。ご了承ください。

しっかりした酸がまろやかでうまい
幅広な味わいは、酸が生んだ“ニュアンス”

「花巴」の花は蔵王権現のご神木でもある桜。巴は吉野桜が山一面に咲く広がりを意味する。
「花巴」の花は蔵王権現のご神木でもある桜。巴は吉野桜が山一面に咲く広がりを意味する。

蔵元杜氏が、吉野の自然の“守り”をして
“気持ちいい酸”を育て上げた「酵母無添加の酒」

「花巴」は酸がうまい酒である。しっかりした酸が、時にブドウのように甘く、時にグレープフルーツのようにほろ苦く、イチゴのように甘酸っぱくも。

芳醇な「山廃」ながら爽やかで、「水酛」はリッチでジューシー。ヨーグルトのような乳酸醗酵の香り、パンチのある複雑な味わいが楽しめる。

始まりは今に至る決断となる。東京農大醸造学科で「蔵元の跡継ぎらしく」酵母菌を研究し、吟醸造りを学んだ橋本晃明さんは、修行先の「剣菱」で「想定外のうまさ」と出会う。

現在の日本酒造りの主流である協会酵母を使わずに、自然発生した“蔵つき酵母”で醸した酒、山廃仕込みの力強い生酒である。「面白い!」。

蔵に帰った跡継ぎは、この地ならではの酒を醸すことにする。
「もともと酸の出る蔵でした」と橋本さん。その名の通り、美しい吉野の自然に抱かれたこの地では、古くより酸を高めた酒が造られていた。

純粋培養された協会の酵母菌を使えば安心だが、仕込みも温度管理もこの酵母菌に合わせた酒造りをすることになる。それよりも「風土に根ざした酒造りが面白い」。

以来、“守り”をするように吉野の自然と向き合う酒造り、うまい酸の酒造りが始まった。今から約8年前のことである。

濃い酒母からの選抜部隊。
それは「花巴」の菌となる

「花巴」の酒は「丈夫な選抜部隊が作った酒なのです」と橋本さん。

酵母無添加のため、酒母造りには時間をかける。酵母添加した速醸なら1週間からせいぜい2週間でできる酒母を、気温、水温により約40日、長くて50日もかけて「濃厚に」育て上げる。

濃い酒母の中で弱い酵母は生きられない。この中を「気持ちいいと感じられる」、選りすぐりの菌だけが繁殖する。

なぜ酵母を無添加にするのか。ここにも理由があった。「酸の質が酵母の香りに引っ張られるのを防ぐため」。つくりたい酸をつくるため、である。

すべては酸のために

「花巴」は3つの製法で醸されている。山廃、水酛、速醸である。つくりたいのは「酸の表現」。

山廃をつくりたいからでも、水酛を醸したいからでもなく「3つの製法でそれぞれ酸を表現したい。酸のもつ魅力、酸の持つ幅を広げたいのです」。

ブドウのように甘く、グレープフルーツのようにほろ苦く、米も酸の雰囲気、ニュアンスを変えるために磨く。結果として、それが純米吟醸や純米大吟醸になる。

ちなみに水酛とは、奈良で室町時代に生まれた古代の製法「菩提酛」とほぼ同じ。菩提酛の酒母を使わず「花巴の表現をしたいから」水酛を名乗る。酒母は「手段」。

酸を表情豊かに仕上げることこそが「花巴」のこだわりなのである。

ここでしか作れない
そんな酒造りを極める

水は吉野の大自然の清流、大峰山系の伏流水。万葉集に歌われた「弓絃葉(ゆづるは)の井戸」とも伝わる井戸からの水である。

「とても柔らかな水。花巴の特徴である、酸がしっかりしているのに、まろやかなのはこの水の影響です。癖もなく、こちらの意向に沿った酒造りができる。カリウムが多いので発酵は旺盛に進みます」。

米も地元農家による奈良県産。山田錦や雄町も使うが、丈夫でよく溶ける「吟のさと」を用いる。これも花巴流である。「雄町や山田錦だけををうちは適正な品種としてとらえていません」。

山間部と平野部では気象や土壌、農家の作り方で変わる。「たとえば水酛をつくるとき、この米がよく溶ける、麹をつくるにはこの米がいい、という具合に、農家さんとその田んぼを理解して酒造りに組み込んでいく」。

そうすることでまた一つ、「ここでしか作れない酒造りがまた極められると思うのです」。

「吉野建て」の壁。平地の少ない吉野で蔵は斜面に建つ。半地下で涼しく、温度が安定する。

温度管理せず発酵は自由
環境が酒の味をつくる

いつかは米の自家採種をしたいと思う。「環境が米を作る。うちの酒造りと同じです。環境が酒の味をつくるのです」。

温度管理をほぼしない。発酵は自由。「偶然のようで必然があり、思う味に導いていくことが無添加の酒造りの面白さ」。

そこには発見と感動がある。日々自然と向き合い、それは「自然の守りをしている感覚」である。

酸を丈夫に気持ちよく育てれば、しっかりきれいな酸になる。つくりたいニュアンスに向けてしっかり醸せる。

その最終形が吉野杉を作った木桶。今は木桶仕込みは蔵売りのみだが、今後増やす計画がある。木桶は温度管理がまったくできず、濃厚に仕上げるも、味はまろやか。きれいで柔らかな酸が出る。

シュワーっとハジける夏のにごり酒、濃厚かつジューシーな山廃純米大吟醸「スプラッシュ」を手に。

「花巴の酒は肉料理にも合います。これでバーベキュー、最高ですよ。この酒で何かを感じたら、ぜひ吉野に遊びに来てください」。吉野愛あふれる蔵元当時からのメッセージ。

「花巴」で吉野を味わう

酸の幅、面白さを広げてきた蔵元杜氏の次の目標は熟成へ向かう。その思いは吉野にある。

「海のない奈良の、山深い吉野では保存食が発達してきた。味噌漬け、醤油漬け、奥地ではジビエなど。だから酸がしっかりした酒が合う」。

水もコメも天候も風土も。「吉野で育まれたことを生かして酒造りをすることが、地酒の楽しさではないか」。

「花巴」で吉野を味わう。奈良のごはんに合った奈良の酒。「それを発見して、感動してもらえたら一番うれしいですね」。

Information

美吉野醸造 株式会社
住所
奈良県吉野郡吉野町六田1286
電話番号
0746-32-3639
リンク
美吉野酒造 株式会社

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