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都会っ娘の農業奮闘記 農meetsGIRL

vol11. 十津川村・山天集落で生きる自給自足の暮らし
「十津川なんば」と「むこだまし」

  • 情報掲載日:2018.06.14
  • ※最新の情報とは異なる場合があります。ご了承ください。

ここ山天集落は、360度山々に囲まれた、とても小さな集落だ。

現在、ここに住んでいるのはたった5人。そして、この場所で自給自足の生活をしながら、十津川村の在来種である「十津川なんば」や「むこだまし」と呼ばれる食材の種を紡ぎながら暮らす、3人のおばぁちゃんに出会った。

今も昔も変わらない
自給自足の暮らし

遡ること昭和30年前後。俊子さん・百合子さん・和子さんの3人がこの集落に嫁いできた。それは、山天集落に人がたくさんいた頃でもある。約8〜10世帯、70名あまりがこの集落で暮らしていた。

「その当時は、1世帯に10人くらいはおったんかの。昔は賑やかで、盆踊りなんかもあったん。嫁いできてから3年は、親から家のことをいっぱい仕込まれて、百姓仕事ばっかりなろうてたんの。お父さんたちはみんな、山仕事へいっとったんわ」。

3人とも、地区や集落は違うが十津川村の出身。当時の話でびっくりしたのは、“くまのい”という薬の話。読んで字のごとく、“熊の胃”である。昔の人は、病気になるとこの熊の胃を乾燥させたものを潰して、飲んでいたそうだ。あまりにも苦いので、味噌に溶かないと飲めなかったらしい。

時は過ぎ、林業は衰退、人はどんどん村外へ流れていった。その後は、子どもたちも結婚や仕事で集落を離れ、それぞれの愛するお父さんも他界してしまった。そして3年前、彼女たち3人の他に2人が増えたものの、5世帯5人だけの小さな集落になった。

彼女たちの暮らしは、昔と変わらず、ほぼ自給自足。生きる糧となる食材のほとんどを自分たちでつくっている。

週1回、集落にやってくる移動販売で魚や肉を買う程度。その移動販売もなくなることが決まっており、どうするのかを尋ねると、「なんとでもなるけんのう」と笑う。

彼女たちは、それぞれ家の横に畑を持ち、米、かぼちゃ、きゅうり、高菜、芋、玉ねぎ、茶など、その数は何十種類にも及ぶ。中でも、この十津川村において、この集落でしか生産・出荷されていない十津川村の在来種がある。それが「十津川なんば」と「むこだまし」だ。

ここでしか育てていない幻の種

「十津川なんば」は、“甘くないとうもろこし”のようなもの。

昔は生で焼いて食べたり、皮をむいて軸の部分をかじったり、ほんのり甘い汁がおやつ代わりだったそうだ。今は、粉(コーンミール)にして村内の『ほっと十津川』に出荷。パンに練り込んで販売している。

「むこだまし」は雑穀の粟の一種で、20年前に十津川村の西側の出谷(いでたに)で種が見つかった。その穂を3本だけ分けてもらい、最初は1畝から栽培をスタートさせ、そこから毎年種をとりながら今につないでいる。

「むこだまし」と合わせて「たかきび」や「こきび」など、ほかの雑穀も育てており、餅にして団子汁に入れたり、お茶漬けにして食べたり、粘りがあっておいしいという。『ホテル昴』では、餅に出汁をかけて提供している。

現在、彼女らの想いと種を途絶えさないため、集落支援員の鈴木さんが立ち上がり『山天じゃぁよ』という名前でプロジェクトを始動。「十津川なんば」を使ったホットケーキミックスなど、商品化を進めている。

種は残る希望が見えはじめた。しかし、山天という集落は生き残るのだろうか。そんな想いがよぎり、最後に「この集落を出たいですか?」と3人に聞いた。その答えが最も印象深く残る。

「いらんいらん、外はかなん。ここでは朝起きたら、やることがいっぱいある。動けることが幸せ。この集落で3人仲良く、助け合いながら暮らす。今が一番やからの。」

右から 松葉俊子さん(84歳) 泉谷和子さん(79歳) 中南百合子さん(82歳)
右から 松葉俊子さん(84歳) 泉谷和子さん(79歳) 中南百合子さん(82歳)

お互いの誕生日を覚え合うほど、仲良しで元気な3人。日々の畑作業をこなす合間で、集まっては畑の情報交換をしたり、他愛もない話をするのが至福のとき。

集落支援員として、村内の集落を巡り、幅広い分野で村民を支援する役割を担う。昨年から、山天で自分自身も「十津川なんば」と「むこだまし」の栽培をはじめ、商品化に尽力。
集落支援員として、村内の集落を巡り、幅広い分野で村民を支援する役割を担う。昨年から、山天で自分自身も「十津川なんば」と「むこだまし」の栽培をはじめ、商品化に尽力。
昔は米が高価だったため、白い餅は正月にしか食べられなかった。その代用として雑穀である粟の餅を食べていたのだそう。写真は右から米、よもぎ、むこだましの餅。
昔は米が高価だったため、白い餅は正月にしか食べられなかった。その代用として雑穀である粟の餅を食べていたのだそう。写真は右から米、よもぎ、むこだましの餅。
取材時に、鈴木さんが持ってきてくれた試作品。「十津川なんば」のホットケーキミックスを使用して作ったカップケーキ。十津川なんば特有の香ばしい香りがあり、ほんのり甘い。
取材時に、鈴木さんが持ってきてくれた試作品。「十津川なんば」のホットケーキミックスを使用して作ったカップケーキ。十津川なんば特有の香ばしい香りがあり、ほんのり甘い。

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