2019/04/08 01:00
暮らしのなかに、奈良発の漆器を。古民家ギャラリーで個展開催中
おとぎ話の世界のような可愛らしい町や、家。
思わずくすっと微笑んでしまう、愛らしい表情の人形たち。
この独特な風合いをもつ人形や町は、吉野の割りばしの木屑を利用した粘土「森のねんどの物語」から造られている。
「森のねんどの物語」は、人形作家・岡本道康氏が2015年に考案。森の恵みを生かした粘土から生み出される人形は、今にも動き出しそうなほどに表情豊か。町の風景からは、集う人々の笑い声が聞こえてきそうな暮らしの気配が感じられる。
小さな子どもからおじいちゃん、おばあちゃんまで。絶妙に雄弁な一瞬を切り取って造られた人形は、写真や絵画、映像とも違う“人形”ならではの存在感でこちらを見上げる。
東大寺大仏殿の西側、戒壇院のほど近くにひっそりと佇む古民家ギャラリー「五風舎(ごふうしゃ)」にて、奈良で活動する漆芸作家の個展が開催されています。
「うるし」といえば、お正月に使うツルっとした赤や黒のお椀を思い浮かべるのが定番ですね。しかし、最近の漆器は一味違います。
若い世代にも工芸ファンやうつわ好きが増えるなか、人気と注目が集まっているのが日常に取り入れやすいデザインの漆器。
「手入れが面倒そう」という誤解を克服し、「丈夫で美しい」漆の魅力に惹かれるファンは、お箸・お椀・菓子皿・豆皿…と、日々の食卓に漆器の趣を取り入れることを楽しんでいるといいます。
これが漆?と一見意外な、マットな質感の作品も
五風舎では3年ぶり2度目の個展。
日常で気軽に使えるお箸やうつわから、茶道に用いる茶道具、塗師の技が光る一点物の作品まで幅広く展示されています。
第30回日本伝統漆芸展 朝日新聞社賞受賞 「乾漆蓮華食籠(かんしつれんげじきろう)」
会場の五風舎は、築約150年。緑の庭の向こうには、万葉集の時代から流れる吉城川のせせらぎが垣間見える心地よい空間です
漆愛好家のみならず、はじめての漆器を選んでみたいという人にもぴったり。期間中は作家の阪本さんが在廊しているので、漆のあれこれを気軽に聞いてみよう。
奈良市の工房にて
阪本さん曰く、漆は、色や質感など実に自由な表現ができる素材なのだそう。
漆の木から採れる樹液に、珪藻土や、ときには豆腐や卵白を混ぜて質感を表現していく伝統技法もあると聞いて驚きます。遥か昔から日本人の暮らしに深く馴染んできた漆ならではの、知恵と工夫が息づいています。
奈良市出身の阪本さんは、石川県立輪島漆芸研修所を卒業後、東京の目白漆芸文化財研究所で重要無形文化財保持者・室瀬和美氏に師事。2012年に独立し、茶道具や日用漆器の制作のほかデザインプロダクト「Urushi no Irodori」も手がけています。
スタッキングできるカップと豆皿のシリーズ
熱に強く、外側が熱くなりにくいのも漆の魅力のひとつ
木目を活かした仕上げは、カジュアルなデザインのなかにも「本物の木と漆」を感じられると幅広い世代に人気です
また、お茶道具の制作も得意とする阪本さんは、お茶会のコンセプトに合わせたオーダーの相談などにも乗ってくれる心強い存在。
これほど多くの作品を一度に見られるのは個展ならではなので、お茶を愉しむ趣味がある人にとってもわくわくできる時間となりそうです。
五風舎の近くには名勝 依水園や入江泰吉旧居などがあり、奈良の歴史や文化を感じられるとても魅力的な街並み。
うららかな春の陽気に誘われて、散策とギャラリー探訪を楽しんでみるおでかけはいかがでしょうか。
阪本修 うるし展
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https://par-ple.jp/gourmet/?area%5B%5D=nara
五風舎
- 住所/奈良県奈良市水門町45
- 電話/0742-22-8162
- 営業時間/10:00~17:00(展覧会により変更あり)
- 定休日/不定休
- 駐車場/無(近隣に有料P有)